アドリーナは海の底で。

なんでもあり と なんにもいらない は よく似てる

 白日の下へ #31

焦ってるのかな、テンマは。 パッと見は冷静だったけど、迷いがあるのかな。
ライヒワイン博士の言った完璧な包囲網とやらはまだ手付かずの状態で穴だらけだ。 今いけば、逃げられる。 テンマは殺したいのか? 本当に自分一人で何とかなると思ってるのか? まだ迷ってるんじゃないのか? …いや、そう考えるのは早計か。
ルンゲの「私は大変なミスを犯していたかもしれない」に答えたドクターギーレンは、語るに落ちた。 確かに、ルンゲはただ自分のアイデンティティを守るために意固地にテンマを追っているとは考えられる。 ただ、それはギーレンにも当てはまっていただけの話だよ。 後ろ暗いところがあり意固地に「テンマは嫌なヤツだ」と思いこもうとしていたのは誰だっけ?
先入観。 テンマは殺人犯である。 テンマは殺人犯ではない。 その理由なんか後から付けている。 お互い様だ。 信じたい。 信じたくない。 信じられない。 信じられる。 そこに理由なんかない。 と、思う。 特に今の段階では、両者に私情が入っていて、証拠なんか何もない。 ……しかし、物的証拠や状況証拠ではなく、経験や長い付き合いの者には解る部分というのは確かにあるだろう。 感覚的なものを証明するのは難しいんだが。 事件の事象から捉えるルンゲの刑事の勘。 テンマの人柄から捉えるギーレンの分析医の勘。 どれを信じるかは…
世界中の正義を一人で背負い込んでいるかのようだ、か。
ディータの顔つきが大人っぽくなっている。 そんなに日が経ったかな。
ライヒワイン博士にキーワードが貼られている? …と思ったらバラバラだった。 「ライヒ」「ワイン」「博士」